No.33

  7月  ×日(曇            軽井沢も日中30度を越える暑い日が続いています。
こうなると途端に増えるのが
ワンコの外耳炎です。

以前はワンコの外耳炎といえば、アメリカンコッカーなどに代表される「好発犬種」がある程度限られていましたが、なぜか最近は犬種による偏りは少なく、むしろあらゆる犬種に満遍なく発生している感じ。
犬種にかかわらず、私たちの想像以上のレベルでワンコの体内では免疫力の低下が生じているのかもしれません。だとしたら状況は深刻です。

一方、以前は臨床症状から、外耳炎の原因となる細菌や真菌(酵母様菌)を推定できることも多く、治療に際し抗菌剤の選択で迷うことは少なかったのですが、最近は多くの抗菌剤に抵抗を示す細菌がとても増えてきました(
多剤耐性菌)。




実際、薬剤感受性試験で「有効な抗生剤」を探そうにも、「あらゆる抗菌剤に完全な抵抗性をもつ細菌(=
有効な抗生剤が無い!)」も珍しくありません。

このような耐性菌の存在は以前から知られていましたし、特定の抗生剤とこれに対する耐性菌の出現はいわば「
永遠のイタチゴッコ」といえなくもないのですが、この急速な広がりを考えると、こちらも深刻!

外耳炎といえどもより慎重に治療する必要がありそうです。
  7月  ×日(晴            この時期涼しいはずの軽井沢ですが、連日30度越えです。

暑苦しいのと早朝からのヘリの大音響で目が覚めた。
何事かと思ってTVをつけて確認したら、うちからわりと近い場所にある鳩山別荘に、韓国からキム・ヒョンヒ元死刑囚を迎えているらしい。そうか、この騒音は警備のヘリなんだ。それにしても朝から騒々しいな〜。

こんな時は仕事に限ります。
なぜなら1Fの病院エリアは動物の入院施設や併設ホテルがありますから、防音・断熱構造に加え徹底的な温度・湿度管理がなされており、実に静かで気持ちのいい環境。仕事もはかどるのだ。

一方2Fの自宅エリアといえば、さすがに病院エリアほどの重厚な防音・断熱構造はありませんし、差し込む日差しが大変強く、空調設備が24時間稼動していても、病院ほど快適ではありません。

というわけで、夜までうるさかったら今夜は病院のワンコ用ホテルで寝ようかな。
  7月  ×日(晴            小鳥の診療・・・その@

今日はセキセインコのスピーチちゃん(♂・1才半)がやってきた。
最近ろう膜(くちばしの根元のお肉の盛り上がったところ)の色が
変わってきて心配とのこと。

セキセインコの場合、ろう膜の色で性別を判定しますが、
スピーチちゃんは♂なので、もともとキレイな青色でした。
ところがここ1カ月で青が薄くなり、かなり肌色に近い状態。

困りましたね、これは。
セキセインコの場合に限っては、

オスのろう膜の変化は明らかに内分泌疾患の兆候

その原因のほとんどは
精巣の腫瘍化

腫大化した精巣はレントゲンで確認できますが、
痩せている子の場合、強い光源でお腹を透かすことでも確認できます。

スピーチちゃんの場合、かなり腹部も大きくなっており、
およそ触診でも診断がつくレベル。

ここまでいくと、治療はかなり難しい。(>_<)
根治を望むなら手術ですが、
小型の鳥類は麻酔が非常に困難
結局内科的な治療で対応せざるを得ないのが現実。

それにしても最近このような症例を多く診ます。
個人的な感想ですが、なんらかの環境因子(化学物質?)を
考えざるを得ない。とっても不安です。
  7月  ×日(晴            小鳥の診療・・・そのA

ここ5〜6年で小鳥の診療は劇的に進化しました。

私の学生時代はもちろん、都内で代診していた頃は院長から、
「小型鳥類(特に体重40g以下の鳥)には絶対
筋肉注射をしてはならない」と厳命されていたものです。
なぜなら、「注射の痛みで容易にショック死するから。」
これ当時の医学的常識。



ところがそんな中でも、
古くから都内で小鳥の専門病院を開いていたT先生は
積極的な治療で知られ、カナリアやセキセインコ、文鳥に対し
筋肉注射どころか、なんと麻酔まで自由に使いこなしていました。

小鳥の診療では大変有名な先生で、十数年前の話ですが、
あるTVドラマの中で、亡くなった小鳥がキリストのごとく復活して、
大空に飛び去るシーンの撮影にT先生の麻酔技術が使われて、
小鳥を熱心に診療する獣医師の間では、
おそらくケタミン(注射用麻酔薬/麻薬)を希釈して注射したのではないか、と話題になりました。

私は晩年のT先生しか知りませんが、
何回か東京都獣医師会の主宰する講習会に参加した際、
「鳥は皆さんが思っている以上に丈夫な生き物です。
積極的に治療してください。」と
口癖のように言っていたことを思い出します。

そのT先生も、もう亡くなられて久しい。
先生の遺志が後進に伝わったのか、
あるいは時代の要請なのかわかりませんが、
いまや小鳥の診療は
「筋肉注射当たり前、必要に応じて点滴まで行なわれる時代」
になりました。
現代は、小鳥にとってはかつて無いほど幸せな時代だと思う。
  8月  ×日(晴            今日は秋田犬の良太君(♂・1才半)が頸部を腫らせてやってきた。
聞けば、散歩の途中でヘビに咬まれたとのこと。
他院を受診したものの、一向に腫れが引かず
出血も止まらないと、飼い主さんの方がパニック状態です。

その腫れがあまりに酷く、私もちょっとビックリ!
時間の経過とともに腫れが頸から顔まで及び、
人相(犬相?)まで変わるくらいのひどい状態。
しかもキズ口からの出血が受傷後6時間たっているのにもかかわらず、
止まる気配がありません。
まいったなこりゃ、即入院です。

いままでヘビに咬まれたわんこも多々診てきたけど、
今回の良太君は今まででも一番過酷な状態かも。
飼い主さんがパニックに陥るのも無理はありません。




おそらく今回は
マムシによるものでしょう。
佐久地方に生息する毒ヘビとしては、マムシとヤマカガシが有名ですが、
ヤマカガシの毒は基本的に溶血毒ですから、
腫れてもソフトボール大です。

さいわい良太君は大型犬ですし体力もありますから、
マムシに咬まれても適切に治療して処置を誤らなければ
死ぬことはありませんが、

小児頭大まで腫れた頚部が気管を圧迫して
呼吸に悪影響を及ぼすようなら、
今後一時的な気管切開も必要かもしれません


マムシ、おそるべし!
  8月  ×日(晴            本日、日本を代表する有識者の団体である日本学術会議が
ホメオパシー療法を否定する会長談話
を発表しました。
これは大変意義有ることだと感じました。

(詳細は以下のサイトでご確認ください)


http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d8.pdf


もそもホメオパシーは全く科学的な根拠のない、
非科学的なものを薬と称して処方するわけですから、
見方によっては詐欺です。

最近の獣医学雑誌の学会開催告知欄を見ると、
まともな学会に混じって、医師や獣医師、薬剤師に
ホメオパシー関連講座への参加を促すようなあやしい広告もちらほら。

そのせいか、ここ1、2年は動物病院でも

ホメオパシー療法の実践やホメオパシー療法専門をウリにするという、
理解しがたい獣医師まで現れる始末


何のために大学で獣医学を6年間もかけて学んできたのか、
もう一度原点に立ち返って、じっくり考えてもらいたいものです。

これに惑わされる飼い主さんはほんとうにいい迷惑だし、
ガンなどの命にかかわる疾患なら、間違いなく助かる命も助からない・・・。

ホメオパシーは医療ではありません。

伝統医療を自称していても、漢方や鍼灸とは本質的に異なるものです。
みなさん、
絶対に惑わされないでください。

※この日誌に登場するわんこ・にゃんこは基本的に仮名です。